ごく普通の家庭に生まれ、ごく普通の人生を送り、ごく普通に結婚し、ごく普通の家庭を築いており、これからもごく普通の幸せを望む人生を送る。と思っていた。あの日までは。

何の変哲もないあの日、ふと意識が遠のき気付いたら見知らぬ場所で囚われていた。
そこには自分以外にも囚われている大勢の人達と、超常の力を振るう化け物達がいた。
化け物達は捕らえた自分達の中の一人の少女が目的だったらしい。
その他の自分たちは、少女の力を覚醒させるための、生贄だった。
如何なる理の術なのか、化け物達は自分達から何かを吸い上げていき、一人また一人と力尽きていく。
意識を、命を失うその瞬間、少女の名を呼び駆け込んでくる少年たちの姿を見たのが最後の記憶だった――――

――――唐突に意識を取り戻した。ここは暗く、狭く、地中に埋められているかのようだった。
必死に瓦礫の下から這い出した。外の世界は、


あれから４年も経っていた。


自分は死んでいる事になっていて、家族はもう自分の死を乗り越えていて、妻は再婚してごく平凡な、幸せな家庭を築いていた。
あの時の事件の事はどれだけ探しても何の情報も出てこなかった。まるで最初から何も無かったかのようだ。
なぜ自分は化け物になってまで今更蘇ったのか。こんな事ならあのまま土の下で眠っていた方がましだった。
そんな折、どこから聞きつけたのかPC3が接触してきた。
酔っ払いの与太話としてこれまでのことを話した。
PC3は笑わずに聞き、代わりにレネゲイドの事、ジャームの事、UGNの事、そしてあの事件の真相を話してくれた。

UGNに誘われたがそんな世界で生きる気にはなれなかった。
しかしPC3と話していて少しばかり前向きにはなれた。
あの時の少年達は間に合わなかったが、ならば今度は自分が誰かの平凡な生活を守れるようにと警察になった。
外見は自分の力で若作りした。戸籍や経歴はPC3が何とかしてくれた。
警察学校では親友とも言える友人も出来た。
やたら暑苦しくて真っ直ぐで勢い全力の猪だ。だが何かを成すのはこういう馬鹿なんだろうなと素直に思える馬鹿だ。
奇妙な年の差の親友が真っ直ぐ進めるよう、せめて面倒な仕事は年寄りが片付けるとしようか。